命令より“意味”を伝えるマネジメント術
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- 11月11日
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部下が動かないのは、意味が見えていないからかもしれない。
「部下が自発的に動かない」「指示待ちが多い」そんな悩みを、飲み会でよく耳にします。正直、私自身も昔は同じように感じていました。
けれど今振り返ると、自分自身もかつて“指示がなければ動けない人”だったのです。
それは能力の問題ではなく、「何のためにやるのか」仕事の意味が見えていなかったから。
指示では人は動かない
人は「指示されたこと」だけをやりがちです。しかも、自分の理想より低い完成度で、期限も遅れがち。だからこそ、リーダーとしてまず考えるべきは「どうすれば相手が動けるか」よりも、「なぜそれをやるのか」を共有できているかです。
ほとんどの人は「命令されること」が好きではありません。誰だって、自分で考え、自分で選びたい。にもかかわらず、現場では「聞いていません」「指示されてません」といった言葉が飛び交う。
このギャップこそ、職場でのストレスの根源だと思います。
① 指示の背景と意味を伝える
どんなに高い報酬を得ていても、「意味がない」と感じる仕事をしていると人は嫌になります。
文化人類学者のデヴィッド・グレーバー氏が著書『Bullshit Jobs(ブルシット・ジョブズ)』の中で紹介している内容を、私もネットで目にしました。
彼によると、社会的に意味を感じられない仕事が増えており、それが人の精神を蝕んでいるといいます。
「自分の仕事が無用であるという信念が個人の幸福度を低下させることがわかったと」
つまり、仕事の意味を理解できない状態は、心理的ストレスやモチベーションの低下につながるのです。
これは現場でも同じ。部下が動かないとき、それは「やる気がない」のではなく、“意味が伝わっていない”だけかもしれません。
② ゴールと“許容ライン”を共有する
ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスの研究「Meaningless work threatens job performance」では、仕事の“目的”が失われたチームでは、作業スピードとパフォーマンスが明確に低下したと報告されています。逆に、仕事の目的を明確に理解しているチームは、報酬や待遇に関係なく、高い集中力と責任感を発揮したそうです。
だからこそ、リーダーは「最高のゴール」と「許される妥協点」を伝える必要があります。完璧を押し付けるのではなく、“ここまでできたらOK”という現実的ラインを共有し、その上で「どう進めたいか」を本人に考えてもらう。
それが“指示された仕事”を“自分事”に変える第一歩です。
③ 感謝を伝えることが次の行動につながる
どんなに長く働いている相手でも、感謝を伝えることは欠かせません。人は、自分の存在を認められた瞬間に「次も頑張ろう」と思える生き物です。「ありがとう」「助かったよ」の一言が、どんな報酬よりも強いモチベーションになります。
心理学的にも、承認が人を動かす最大の原動力であることは多くの研究で示されています。感謝と意味づけをセットで伝えるだけで、チームの空気は大きく変わります。
意味のある仕事は人を動かす
アメリカの研究「Accepting Lower Salaries for Meaningful Work」では、多くの人が「意味ある仕事なら、給与を下げても選ぶ」と結論付けてています。つまり、給与や待遇ではなく、“意味”こそが働くエネルギーの源なのです。
高給与を選んだ人ほど満足度が下がり、意味ある仕事を選んだ人ほど幸福感が高いという結果も出ています。
要するに、“報酬”よりも“目的”が人を動かすケースが多いのです。
人は意味で動く
「部下が動かない」と嘆く前に、まず「意味を伝えられているか?」を振り返ってみてください。
なぜこの仕事をやるのか
どこまでできればいいのか
どんな価値があるのか
そして「ありがとう」の一言
人は、意味と感謝を感じたときにこそ、心から動きます。命令ではなく、意味や自分の存在価値を感じられる仕組みが人を動かすのです。
それが、これからの時代のマネジメントだと信じています。
もしこの考えが、マネジメントに悩む方の参考になり、少しでも意識するきっかけになれば嬉しく思います。


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