あなたの思考はどっち?「役割思考」と「目的思考」
仕事をしていると、同じような業務を担当していても、周囲の状況に気づき、自ら行動できる人と、なかなかそうならない人がいると感じることがあります。
この違いはどこから生まれるのでしょうか。
最近、その理由について考える機会があり、私なりに一つの仮説にたどり着きました。
それが「役割思考」と「目的思考」という考え方です。
今回は、この二つの思考の違いと、それが長期的な成長にどのような影響を与えるのかについて書いてみたいと思います。
組織の効率化が生み出す「役割思考」
大企業などの規模が大きな組織では、ビジネスの仕組みや業務プロセスが整備され、一人ひとりの担当範囲や責任が明確になっています。
これは決して悪いことではありません。
多くの人が関わるビジネスを効率的に進め、一定の品質を維持するためには、非常に合理的な仕組みだと思います。
一方で、そのような環境で長く仕事をしていると、与えられた役割の範囲内で物事を考える習慣が身につきやすいのではないかと感じています。
例えば、
「自分に与えられた目標を、どのように達成するか」ということは一生懸命考える。
しかし、自分の担当外で問題が起きても、「それは自分の仕事ではない」「担当者が対応すればいい」と考え、それ以上は関心を持たなくなる。
もちろん、担当する仕事に責任を持ち、確実に遂行することは大切です。
ただ、自分の役割を果たすことだけが目的になってしまうと、仕事全体を見渡す機会が少なくなってしまうのかもしれません。
私は、このように自分に与えられた役割を中心に考える姿勢を、ここでは「役割思考」と呼びたいと思います。
「目的思考」の人は何が違うのか
一方で、私が「目的思考」と考える人は、少し違った視点で仕事をしています。
与えられたタスクをこなすだけではなく、「そもそも、この仕事は何のためにやるのか」「最終的に、どのような成果が求められているのか」「どうすれば、お客様や周囲の人に喜んでもらえるのか」ということを考えています。
例えば、自分の担当業務が予定どおり進んでいたとしても、隣のチームが問題を抱えていたらどうでしょうか。
役割思考であれば、自分の仕事は終わっているので問題ないと考えるかもしれません。
しかし、目的思考の人は、プロジェクト全体の成功を考えます。
「自分に何か手伝えることはないだろうか」「この問題を解決するために、別の方法はないだろうか」そう考え、自ら周囲に働きかけることができるのではないでしょうか。
また、自分の担当業務が単調で、面白みを感じにくい仕事だったとしても、その仕事が最終的な目的にどうつながっているのかを理解していれば、取り組む意味を見いだしやすくなります。
大切なのは、タスクを終わらせることだけをゴールにしないこと。
その先にある目的を理解し、成果につなげようとすることだと思います。
こうした人は、周囲から信頼され、結果として新しい仕事や責任ある役割を任される機会も増えていくのではないでしょうか。
1年後、2年後に生まれる成長の違い
ここで私が特に重要だと感じているのは、二つの思考によって生まれる長期的な成長の違いです。短期的には、それほど大きな差はないかもしれません。
同じ仕事をして、同じように成果を出していれば、周囲からの評価も大きく変わらないでしょう。
しかし、毎日の仕事の中で、
「なぜ、この仕事が必要なのか」
「もっと良い方法はないだろうか」
「自分にできることは、ほかにないだろうか」
と考え、実際に行動している人は、少しずつ経験の幅を広げていきます。
自分の担当外の仕事に関心を持つことで、知識が増え、人とのつながりが生まれ、物事をより広い視点で捉えられるようになります。
こうした思考と行動を1年、2年と積み重ねたとき、どのような違いが生まれるでしょうか。
私は、その小さな積み重ねが、やがて大きな能力の差になって表れるのではないかと考えています。
特別な才能がなくても、日々の仕事に向き合う姿勢によって、自分の可能性は広げられる。
そう考えると、毎日の仕事も少し違って見えてくる気がします。
周囲と比較するより、昨日の自分と比較する
今はSNSなどを通じて、他人の活躍や成功が簡単に目に入る時代です。
・同年代の人が昇進した。
・転職して年収が上がった。
・若くして起業し、成功している。
そんな情報を見れば、自分だけが取り残されているように感じることもあるでしょう。
周囲と比較して焦ったり、早く評価されたいと思ったりするのも自然なことだと思います。
ただ、私は少し違った考え方もあっていいのではないかと思っています。
他人と今の自分を比較するのではなく、昨日の自分と比較してみる。
例えば、
・昨日より何ができるようになったのか。
・昨日よりリスクを予測できるようになったか。
・昨日より仕事全体の流れを理解できるようになったか。
・昨日より周囲の人を助けられるようになったか。
そんな小さな変化に目を向けてみるのです。
毎日劇的に成長する必要はありません。
昨日分からなかったことが、今日は少し理解できるようになった。
それだけでも立派な成長だと思います。
自分自身の成長を認められるようになれば、周囲の評価だけに振り回されることも少なくなり、長期的な目線で自分を磨き続けられるのではないでしょうか。
リーダーに必要なのは、役割を超えて考える姿勢
企業経営において、次世代のリーダーを育てることは重要な課題の一つです。
では、どのような人がリーダーとして信頼されるのでしょうか。
私は、自分の担当業務だけではなく、チームや組織全体の目的を考え、行動できる人だと思っています。
ただ、実際には簡単なことではありません。
自分の仕事が忙しいときに、ほかの人を助ける。
誰も引き受けたがらない課題に向き合う。
自分の担当ではない問題にも関心を持ち、解決に向けて行動する。
短期的に考えれば、面倒なことが増えるだけかもしれません。
「なぜ自分が、ほかの人の仕事までやらなければならないのか」
そう感じることもあるでしょう。
しかし、その経験を通じて得られる知識や判断力、人との信頼関係は、将来の自分にとって大きな財産になるはずです。
若い頃、上司から教わった言葉で、今でも心に残っているものがあります。
「リーダーとは、自己犠牲とオブリゲーション(義務)である」
当時は、その意味を十分に理解できていなかったかもしれません。
今振り返ると、自分の都合だけではなく、仲間や組織のために責任を引き受ける覚悟が必要だということだったのではないかと感じています。
もちろん、自己犠牲とは、無理をして働き続けたり、自分だけが負担を背負ったりすることではありません。
仲間と協力し、必要なときには自ら行動し、チームとして成果を生み出すこと。
そうした姿勢が、リーダーとしての成長につながっていくのだと思います。
若い時間を、未来の自分のために使う
最近は「静かな退職」という言葉を耳にすることがあります。
与えられた仕事をきちんとこなし、それ以上の責任や負担を積極的には引き受けないという働き方です。
仕事に対する価値観は人それぞれですし、どのような働き方を選ぶかは個人の自由だと思います。
ただ、一つ考えてみてほしいことがあります。
今、目の前にある仕事や経験は、将来の自分にどのような価値をもたらすのでしょうか。
短期的に楽をすることや、目先の損得を考えることが、必ずしも長期的な自分の利益につながるとは限りません。
少し難しい仕事に挑戦する。自分の担当外のことにも興味を持つ。困っている仲間を助ける。目的を理解し、自分で考えて行動する。
そうした経験が、数年後の自分の選択肢を広げてくれるかもしれません。
若い頃の時間は、二度と戻ってきません。
だからこそ、周囲の風潮や他人の成功に必要以上に振り回されず、自分自身の成長に目を向けてみてはいかがでしょうか。
焦る必要はありません。
昨日より少しでも成長できていれば、それは確実に自分の財産になっていきます。
短期的な損得だけではなく、5年後、10年後の自分がどうなっていたいのか。
そんな長期的な目線を持ちながら、日々の仕事に向き合うことが大切なのではないでしょうか。

コメント